アメコミホリデイ

アメリカンコミックスの魅力に目覚めて以来、日々楽しく周辺文化に接しています。アメコミに関して感じたことをつれづれ綴っていこうと思います。 なにぶん始めたばかりのブログですので、お気が向きましたらリンクや記事のご紹介等して頂けますと、とても励みになります。

東京コミコン 2016 プレビューナイト 感想

史上初の試みとして日本で開催されるコミコン、東京コミコン2016に行ってきた。

開催1日目、12/02(金)のプレビューナイトに参加。

 

開催側も初めての試みということで、参加する側としても手探り状態。開場の17:00までには大分余裕のある時間帯に向かった。

 

先に述べておくと、これは後に全く杞憂に終わるのだが、会場の幕張メッセに向かう道すがらでは、自分たちと同方向に向かう人々の姿が見当たらず、寂しげな景色にかなり不安になった。平日夕方からのプレビズ開催日だとはいえ、TOKYOゲームショウに行き慣れている身としては、いつもと調子が違うため、やや胆を冷やす羽目に陥る。すわ第1回コミコンの開催は失敗か…会場は閑散としているのでは…とハラハラした気分になりつつ現地へと向かう。

 

だが着いてみれば何のことはない、ゲームショウとは違うホールで開催しているだけであった。てっきり幕張メッセといえば国際展示場1〜8だと思っていたが、別棟の9〜11ホールでの開催だったのだ。このような間の抜けた思い違いをされる向きは少数とは思うが、諸氏も気をつけられたし。

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正しい場所に移動してみれば入場待ちの人だかりが。一安心。と同時に、普段は滅多なことではお目にかかれない同行の士の軍勢の出現に、にわかに元気付き、気分が高揚する。これでなくては。サンディエゴコミコンなど、本家のコミコンで見るような活気には憧れる。日本でもこれを良い契機として盛り上げていければと思う。

 

中に入ればデロリアンナイトライダーinキットなどのモデル展示がお出迎え。精巧なモデルをしばし見入る。

 

ちょうど開場直後だったこともあり、メインステージではかのスタン・リー御大が開会のご挨拶中。遠目からではあったが、間近に彼氏の姿を見られた事は、今回一番の喜びであった。読者に向けて気軽に話しかけるような語り口のスタン一流の軽妙な挨拶…60年代の作品から既に確立されていたあの挨拶文と同様の洒脱な語りがまさに今目の前で繰り広げられている…。

 

スタン氏はそんなこちらの感動も尻目に、積極的に美女の腰に手を回す粋っぷりを発揮。近年の映画作品の影響もあって定着して来ている“美女をはべらせるスタン・リー”の図をサービス精神たっぷりに披露してくれていた。

 

やはり彼氏はこういった自らのポリティカルイメージをも含めたキャラクター造形力と、そのコントロールが抜群にうまい。美女とおじいちゃんという微笑ましいことこの上ない図でオーディエンスの心を軽妙に掌握する。この運動神経的なエンターテイナー力がひいてはキャラクター造形力とも関係しているであろうことは畢竟推察されることだ。非常に興味深い。

 

ひとしきり笑い、感動し、次は今回1番の目当てにしていたDCドラマ『フラッシュ』の衣装展示へ。グラント・ガスティンが実際に着用したものである。

 

私が最も気に入っているスーパーヒーローは何を隠そうバリー・アレンの二代目フラッシュである。そしてグラント・ガスティン主演によるドラマシリーズは史上空前に理想的なフラッシュの映像化作品なのである。

 

気合を入れて劇中に登場したTシャツを纏い会場入りしていたため、憧れのスーパーヒーローが纏う本物の展示衣装と並び立って記念撮影。感無量である。今回はこの衣装を見ることを、スタン御大の姿を拝見することに次いで大目的としていたため、ひとまず大満足である。ここでは全体像のみを載せておく。

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大目的二つを達成したため、アーティストアレイへ。勝手がわからないなりに、先日読んで大変感銘を受けたコミック『バットガールバーンサイド』のアーティスト、バブス・ター氏の元へと赴く。今回、同タイトルの邦訳本だけは持参していたのである。

 

babsbabsbabs.com

 

ブースに着くなりバブス・ター氏は快く笑顔でサインに応じてくださった。せっかくなので特製のオリジナルステッカーを二枚購入。バットガールブラックキャナリーのセットである。同誌での彼女達コンビの活躍が好きなのだ。

 

同誌を大変面白く読んだことと、見開き2ページに渡って群衆が描かれている絵の中に“月野うさぎ”らしき女の子の後ろ姿を見つけ嬉しく思った旨を伝えると、彼女は得意げに「他にも…」とずいぶん時間をかけてページをめくり、バーバラの装備一式の中に“ムーンスティック”が隠されていることや“ちびうさ”もいることを教えてくださった。ありがたくも非常に愉快なひと時であり、彼女への好感を新たにした。

 

尚、バブス・ター氏はスクィール・ガールのコスまでしており、風貌も見目麗しく大変可愛らしく仕上がっていた。また、こちらに相対するときは非常に丁寧に応対してくださるが、隙あらばすぐに肘をついて、いたずらげな表情でスマートフォンを操作し始める様などは、まこと『バーンサイド』の登場人物そのままの様子であり、それも含めて非常に味わい深い光景であった。取り次いでくださったエージェントの女性にも感謝する。

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ここまで来て大分満足した私は壁沿いに小さめの展示を覗いていく。実はそこで今回のコミコンの中でも1番感心したブースに出会う。

 

ブレードランナー新作の公開に連動した“ブレラン同好会による自主展示”なるブースである。企業主催の展示ではなくファン主催ものだ。だが内容はヴィドフォンなる大型劇中プロップの本物の展示に、これまた劇中プロップの重量まで完全再現したデッカードブラスターの展示など、群を抜いて本格派なのである。

 

しかもかのデッカードブラスターの映画版のプロップには、どうも発光機能らしきものの痕跡があったらしく、忠実に再現するにあたり、実際に発光機能をその部位に実装した完全理想版のモデルだというのである。

 

そして太っ腹なことに実際に触らせて貰える。劇中では最強のマグナムかショットガンかというような描写であったが、その性能がいかにも納得のいく、相当の重量があり、なるほどこれは、ハリソン・フォードが肩に担ぐようにして休んでいた仕草が自然に導かれたスタイルだったのだということを想像できた。

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さらにはあの“ユニコーン”の折り方を紹介したペーパーまで配布しており、これは非常に嬉しかった。銀の折り紙があればアレをそのまま再現可能ではないか。良いアイテムを思いついたものである。ありがたく頂戴し、浮かれてブースを後にした。

 

出展企業の中には洋泉社もあった模様で、中には映画秘宝のブースがあり、なんと隣には高橋ヨシキ氏の専用ブースがあった。しかしそのようなブースがあるとは知らなかったため、なにも用意がない。せっかくコーナーを用意されていることであるし、出来ることならサイン等も頂戴したかったが、無念である。例の“裏切りの八悪人”のポスターが付録された映画秘宝か、彼氏の著書『悪魔が憐れむ歌』を持参するべきであった。これはよくよく事前に調べておけば良かった、無念である。

 

帰り際にアメコミ邦訳でお馴染み、小学館集英社プロダクション、略称小プロのブースに寄り、ウェブインタビューでお顔を拝見していたので恐らくそうであろうと思われるが、同社の山本氏であろう方とお話しした。ジェフ・ジョンズ期のフラッシュを邦訳してほしい旨を中心に邦訳の希望をお伝え出来、これも満足。全身ほぼアイアンマングッズで装われた素敵な女性達に混じり、会場を後にした。

 

そんな訳で楽しかった点も多かった東京コミコン1日目であったが、やはり残念なのは肝心要のマーベルによる専用ブースが無かったことである。マーベルスタジオ製の映画シリーズの人気ゆえに、こうやってコミコン開催にも繋がっているであろう現状の世相を鑑みるに、これはどうしても画竜点睛を欠いていると言わざるを得ない。

 

マーベル関連の展示は本当に皆無と言っていいほどで、関連するものはホットトイズのブースのみ。それ自体は良いものなのだが、こと日本におけるアメコミ関連イベントはホットトイズ関連のことが多いため、せっかく初めてのコミコン開催であるにも関わらず、独自性に欠ける結果になってしまっている。

 

さらに良くないのはこれが物販も同じ状況な点である。私もそうだが、会場に来ていた参加者の多くは、おそらく特別なグッズがあればこれを購入したい、積極的にアメコミ関連のものにお金を使いたいと思っている来場者が多数いたはずである。にも関わらず、各々のブースは出展各社の展示に任され、グッズを販売するコーナーは非常に散発的になっており、その規模も少なく、ほぼ普通にいつも国内で入手できるような簡単なものが主なものであった。

 

これは大きな機会損失であり、非常に良くない。それこそホットトイズなどは例年“原宿コミコン”とまで銘打って、本国ではコミコン限定品として販売されたような品を独自に確保し、それを日本で販売するとともに、イベントとしてのコミコンを紹介しようとする努力さえしてくれているではないか。

 

私もコミコン限定品のレゴ製品など、なにか特別なものが無いか期待していたが、その手のものは無かった。開催第1回目であるからして仕方が無いが、せっかくなので次回からはこちらの購買意欲を無駄にしないグッズの展開をしてもらいたいものである。

 

少しそれたが、あるいは東京コミコンというものが、そもそも日本企業が主だって開催し、海外資産を招くというイベントであるならば、せめてディズニージャパンはブースを設けるべきであろう。ことマーベル映画やスターウォーズシリーズの配給における同社の姿勢に対しては、ふた時代ほど古いマーケティング至上主義手法に拘泥する嘆息ものの運営方針のため、いつも歯がゆい思いをしているが、だからこそ、ここで今一度、コミックファンへの歩み寄りを見せて欲しいと願うばかりである。本国でのコミック映画の認知のされ方の流れに学び、ムーヴメントそのものを起こしていく気概を持って欲しいものだ。帰りの電車で夢の国帰りの人々と同乗し、千葉の地で思わず抱いた雑感である。

 

ことほど左様に、マーベルに関する展示が骨抜きなため、どうしても指摘せざるを得無かったが、とまれ第1回目の開催である。宇宙人ポールでのサイモン・ペグ&ニック・フロストコンビではないが、夢にまで見たあの大イベント“コミック・コンベンション”の日本での開催である。個人的にはその開催自体を大いに寿ぎ、また、最大限楽しんだ。

 

ぜひとも来年以降もどんどん規模を拡大し、開催し続けて欲しいものである。

 

先日豆魚雷が主催したアディ・グラノフ&マーク・ブルックス両氏のサイン会で出会った友人氏は今回、スタン・リー御大の撮影&サイン、さらにジェレミー・レナー氏のサインと、奮発したそうである。私自身は憧れの実人物との撮影ともなると、逆に他人っぽさを感じてしまうのが寂しく思ってしまうので、今回著名人の撮影会&サイン会は参加しなかったが、友人氏の幸運を祈るばかりである。

 

あとは今回渡日した来賓達が日本での滞在を楽しみ、良き思い出としてくださることを同様に心より祈る。

 

余談だが、つい先日などはJRA主催のジャパンカップのイベントゲストとして『メンタリスト』主演の大スター、サイモン・ベーカー氏をロンジン賞のプレゼンターとして招くという快挙があったが、イベント進行の都合上、同賞授与後もなんとなく場に残ることになっている同氏の前で、優勝馬の馬主であったところの北島三郎氏が歓喜と興奮のあまりアカペラで『祭り』を歌い上げ、それをサイモン・ベーカー氏が優勝騎手タケユタカ氏らと共に神妙に聴いているという、およそこの世の不条理を標榜したかのような摩訶不思議な光景が現出したことは記憶に新しい。それは一体どういう状況なのか。おそらくその日の当日までは、地球上でそのような出来事が起こるとは、誰一人として想像し得無かったシチュエーションであろう。

 

その話を聞いた私などは現実に存在するアメイジングな事態に大いに笑ったものであるが、願わくばサイモン・ベイカー氏本人にとっても、得難い奇矯な体験であったと楽しんでくださっていたことを願わずには居られない。

 

何にしても今回純然たるハリウッドスターであるところのジェレミー・レナー氏らを初回にして招いた東京コミコンの運営者は讃えられて然るべきであるし、今後のイベントのますますの盛り上がりを期待してやまない。